DTMで長く続く論争、EQとコンプの挿す順番はどっちが先か、気になりますよね。「挿す順番で何が変わるの?」「どっちでもいいじゃん」と思う方も多いのではないでしょうか。そこで、今回はミックスにおけるEQとコンプの挿す順番について解説します。
EQとコンプの正しい挿す順番は?
元も子もありませんが、結論どちらも正解です。というより、ケースバイケースなので、必ずこちらを先に、というのはありません。使用する音の素材・EQの種類・コンプの種類などによって、どちらを先に挿すか変わってきます。
EQやコンプなどのプラグインの種類については、下記の記事で詳しく解説しています。参考にして頂ければと思います。
順番の前に前提として抑えておきたいポイント
EQ(イコライザー)は、各周波数の音量を調整して音質補正を行なうプラグインです。コンプレッサー(コンプ)は、設定値を超えた音を圧縮して、音量のムラを抑えます。
これらの挿す順番のポイントとなるのがコンプレッサーです。コンプレッサーは、音全体を圧縮しますが、低域から高域まで均等に圧縮するわけではありません。
例えば、低域が特に大きい音に対しては、低域に強くコンプが働いて、それ以外の中域・高域はうまくコンプレッションされません。特に低域は、実際に耳で感じるよりも大きな音量を持っているので、コンプで低域だけが潰れることがあります。
プラグインを挿す順番による音の違い
基本的にどのDAWでも、インサートしたプラグインは、上から下に向かって順番にそのプラグインの効果がかかっていきます。そのため、EQとコンプに限った話ではなく、プラグインを挿す順番は音に大きな影響を与えるので重要なポイントです。
EQがかかった音にコンプをかけるのか、コンプがかかった音にEQをかけるのか、状況によって異なるので、この項目ではそれぞれについて解説します。
コンプ→EQの場合
コンプレッサーで音のムラを抑えてから、EQで帯域ごとの音質補正を行うパターンです。ちなみに筆者は専門学校でこの順番で教わりました。今ではこれを基本の型とするのはいかがなものかと思っています。時代の影響もあったでしょうが(笑)
話を戻しますが、この場合は後ろにEQがきているのがポイントです。コンプによって持ち上がった無駄な帯域をEQによってカットしたり、音質補正の細かな追い込みができます。一方で、周波数が偏った音の場合、コンプが音量の大きな帯域に強く働くので、注意が必要です。
音の素材がある程度低域から高域までなだらかな素材や、低域しか担わない・高域しか担わないなど、周波数がピンポイントな素材に対して良い順番と言えるでしょう。
EQ→コンプの場合
EQで音質補正を行なってからコンプで音のムラを抑えるパターンです。こちらは、無駄な帯域をカットしてからコンプを通すので、必要とする帯域にコンプを働かせることができます。コンプのかかり方を詰めたい時におすすめの順番です。
最も融通が利くのはEQ→コンプ→EQ
当然ですが、1つのトラックに対して、EQとコンプをそれぞれ1つずつしかインサートしてはいけないということはありません。明確な意図があれば、いくつでも挿して大丈夫です。そのため、数制限なしで考えたときに、EQとコンプの挿す順番で、最もバランスの取れているのがEQ→コンプ→EQと言えます。
汎用性が高いEQとコンプの挿す順番
①EQ(主に無駄な帯域のカット)
②コンプ
③EQ(最終的な音の補正とキャラ作り)
他のエフェクトとの兼ね合いも考慮して順番を決める
EQやコンプ以外のプラグインエフェクトとのバランスも考慮する必要があります。EQやコンプのほかにも、エキサイター・サチュレーター・モジュレーションなど、プラグインの種類はさまざまです。
例えば、モジュレーション系は音を大きく加工することによく使われますが、その分音のムラが増えてまとまりのない音になる傾向があります。そのため、後ろにはコンプをインサートすることが多いです。
他のプラグインの場合も、挿す順番によって最終的な仕上がりに変化を与えます。いずれにしても、各プラグインの意図を考えつつ順番を決めるとよいでしょう。
まとめ
今回はプラグインの中でも特に使用頻度が高いEQとコンプの挿す順番について取り上げました。ここに書いてあることが必ずしも正解というわけではないので、あくまで参考にしていただければと思います。この記事を通して、皆様の今後のミックスがさらに快適になれば幸いです。