DTM初心者の方は、ミックスでどんなプラグインを使えばいいかわかりませんよね。そもそもプラグインって何?という方も多いのではないでしょうか。この記事ではミックスでの使用頻度が高いプラグインの種類について解説します。無料プラグインも紹介するので、PCがあればすぐにミックスが始められますよ!
そもそもミックスって何?という方は下記の記事で詳しく解説しています。参考にしていただければと思います。
プラグインとは?
DTMで使われるプラグインとは、楽曲制作で使用するエフェクトのことです。DAW(楽曲制作ソフト)購入時に、ある程度のものが標準で入っていますが、あとからプラグインを追加することで、ミックスの幅を広げることができます。
最近では、無料でも上質なプラグインが数多く展開されているのでチェックしてみましょう。プラグインには、VST・AAX・AUなどさまざまな規格(フォーマット)があり、中には使用できないDAWもあります。下記の表は、3種類の現行プラグイン規格とよく使われているDAWの関係です。
DAW | VST | AU(AudioUnits) | AAX |
---|---|---|---|
Cubase | ○ | ||
Studio One | ○ | ○ | |
Pro Tools | ○ | ||
Logic | ○ | ||
ABILITY | ○ | ||
FL Studio | ○ | ○ | |
GarageBand | ○ | ||
Ableton Live | ○ | ○ |
この他に、RTAS・TDMなどの現在は使われていない規格もあります。これらのように、DAWによって使用できる・できない規格があるので、購入する際は注意しましょう。特にProToolsはAAXにしか対応していません。
また、プラグインには64bitと32bitがあり、PCのOSが現在主流の64bitCPUの場合は、プラグインが64bitと32bitの両方を使用可能です。しかし、古いPCに採用されている32bitCPUでは、32bitのプラグインのみ使用でき、64bitは使用できないので注意しましょう。
プラグインの種類
ここではミックスでの特に使用頻度が高いプラグインの種類を紹介します。特定のプラグインの紹介は、別の記事で紹介する予定です。
EQ(イコライザー)
EQは、周波数を調整することで音質を整えることに使われるプラグインです。ミックスでは、各楽器の周波数を部分的にブースト・カットなどして、楽器同士の帯域の棲み分けをし、全体で聞いた時にまとまりのあるサウンドにします。
また、急激なローカット・ハイカットをしてラジオボイスにするなど、飛び道具的な使い方がされることも多いです。EQは、音の補正からキャラ作りまで幅広く使用されます。
パラメトリックEQ
パラメトリックEQは、各周波数帯域の中心周波数・レベル・帯域幅を調整するタイプです。調整可能な帯域の数はそのEQによって異なります。パラメトリックEQは、最もスタンダード・シンプルなタイプで、単にEQと言った場合はこのタイプを指すことが多いです。
ダイナミックEQ
ダイナミックEQは、入力された信号レベルに応じて、かかり方が変化するタイプです。局所的に飛び出したときだけ、その周波数をカットするといった使い方できるので、融通が利きやすく、自然なサウンドにできます。この後紹介するマルチバンドコンプレッサーと役割が非常に似ています。
リニアフェイズEQ
リニアフェイズEQは、周波数をカット・ブーストしたときに生じる位相のずれを起こさずに調整できます。かかりがソフトで、大きく音を変化させたいときには不向きですが、自然に周波数を変化させるので、主にマスタリングに使用されることが多いです。
コンプレッサー(コンプ)
コンプレッサーはEQと並んで非常に使用頻度が高いプラグインです。設定値を超えた音量を圧縮して、音のムラを少なくするプラグインです。トランジェント・アタック抑えて均一感のある音にしたり、思い切り圧縮して露骨なコンプサウンドにしたりすることもあります。
また、基本的に通すだけで音の変化があり、音のキャラ付けができるのも特長です。かかり方もコンプによってさまざまで、どの楽器にどのコンプを使うかが非常に重要と言えます。
FET(フェット)コンプレッサー
アタックタイムが非常に早く設定できるタイプのコンプレッサーです。音の立ち上がりが早いドラム・パーカッション系やギター・ピアノなどへの使用に適しています。ナチュラルなかかり方が特長で、音がもこりにくく自然に太くなる印象です。
OPTO/オプト(光学式)コンプレッサー
OPTOコンプは、アタックとリリースタイムが固定されており、設定されているアタックタイムが非常に遅いことが特長です。そのため、使用する楽器を非常に選びます。適した楽器は、ボーカルやストリングス系など、アタックが滑らかな楽器です。
反対に音の立ち上がりが早いドラム・パーカション系には不向きです。使い方は選びますが、適材適所に使えば非常に使い勝手がよく、コンプ感なく自然に音を圧縮することができます。
VCA(バス)コンプレッサー
VCAは、マスタートラックやバストラックなどで、音にまとまりを持たせるために使用されることの多いタイプです。もちろん楽器単体に使用されることも多く、トランジェントを揃えたり、いかにも圧縮したというような迫力のコンプサウンドを作ることもできます。
真空管(チューブ)コンプレッサー
真空管特有の暖かく倍音が乗ったサウンドが特徴的なタイプです。通すだけでも音の変化を感じられるので、軽く歪みが足されて明るい音にしたいときに使用されます。マスタートラックから楽器単体まで幅広く使用でき、アタックを揃えるというより、真空管らしい音を付与したいときにおすすめです。
マルチバンドコンプレッサー
複数の帯域に独立したコンプをかけることができるタイプです。耳に痛い高域や無駄に膨らんだ中低域など、気になる帯域にだけコンプをかけることができるので、音の全体像を崩さずに自然で耳馴染みの良い音を作ることができます。
ダイナミックEQと非常によく似ていますが、機構やかかり方などは異なります。細かい違いは省略しますが、マルチバンドコンプは音を強く圧縮したい時に使用し、ダイナイックEQはナチュラルな変化で細かい調整に使用されることが多いです。
ディエッサー
ディエッサーは、主に高域のみコンプレッションするコンプで、マルチバンドコンプの簡略版といったタイプです。基本的にはボーカルの過剰な歯擦音を処理することに使用されます。
リミッター・マキシマイザー
リミッターやマキシマイザーは、主に音圧を上げる目的で使用されます。そのため、ミックスよりマスタリングで使用されることが多いです。音量が設定値を超えないようにしつつ、音を圧縮して迫力を出します。
ノイズゲート
ノイズゲートは、小さな音に反応して音を下げるプラグインです。ノイズを除去する目的で使用されます。最近では音量だけでなく音質などをAIが読み取って、ノイズだけを除去するプラグインも販売されています。
歪み系プラグイン
音に歪みを付与するプラグインです。思いき歪ませて加工したサウンドから、自然な歪みを付与して存在感を出すものがあります。
アンプシュミレーター・エフェクター
アンプシュミレーターは、ギター・ベースのアンプをモデリングしたプラグインです。シンプルにギター・ベースアンプとして使用することができるほか、それ以外の楽器にかけて歪ませたりすることもできます。
歪み系のエフェクターも、ディストーション・オーバードライブ・ファズなどさまざまなタイプがあり、どれもさまざまな楽器の音を劇的に歪ませる飛び道具として使用されることが多いです。
ビットクラッシャー
ビットクラッシャーは、音の解像度をあえて下げることで、音を歪ませるエフェクトです。lo-fi(ローファイ)なサウンド作りにぴったりのプラグインと言えます。
サチュレーター
サチュレーターは、テープや真空管などのアナログ機器を通した時に生じる、自然な歪みを付与するプラグインです。テープシュミレーターもこのカテゴリーであり、音に大きな変化をつけるというより、あくまで自然な歪みを与えてアナログ感を出すことに使用されます。
デジタル臭くて浮いてしまう楽器に使用すると、うまく馴染むことが多いです。
エキサイター・エンハンサー
エキサイターとエンハンサーは、音に倍音を付与することによって、音に存在感を出すことができます。主に埋もれてしまった音を際立たせることに使用され、抜けの良い明るくはっきりとした音が特長です。
空間系
リバーブ
リバーブは音にウェットな広がりを付与するプラグインです。洞窟や温泉・浴室で音出したときのような響きを持たせることができます。リバーブにはホール系・ルーム系・チャンバー系・リバース系など多くの種類があり、音の広がりや響き方などはさまざまです。
しかし、プラグインとしてのリバーブは、1つのモデルの中にさまざまな種類のリバーブが内蔵されているので、種類別に購入する必要はありません。楽曲の雰囲気や楽器に合わせて、適材適所に使うのが重要です。リバーブもミックスでは必ずと言っていいほど使用されるプラグインです。
ディレイ
ディレイは、音が鳴ったあとに、その音を追いかけるようにして続けてその音が繰り返されるプラグインです。山びこをイメージするとわかりやすいでしょう。リバーブと同じ空間系のプラグインですが、ふわっとしたリバーブに対し、ディレイは比較的はっきりと音が繰り返されます。
しかし、用途はさまざまで、山びこ的な使い方のほか、リバーブのようなウェットな空間を付与する使い方にもおすすめです。
モジュレーション系
モジュレーション系は、主に音を揺らす・うねらすなどして、効果を与えます。いかにも加工したというような効果的な使われ方が多いです。種類は豊富で効果もさまざまですが、どれも構造は似ており、エフェクティブな音作りに使用されます。
主なモジュレーション系プラグイン
- コーラス
- フェイザー
- フランジャー
- トレモロ
- リングモジュレーター
- オートパン
ピッチ補正プラグイン
ボーカルや楽器のリードフレーズのずれたピッチを修正できるのが、ピッチ補正プラグインです。現代のボーカルのミックスには欠かせないものとなっています。ピッチを補正するだけでなく、主旋律からハモリを生成したりケロケロボイスにしたりできるなど、多彩な使い方が可能です。
シグネチャープラグイン
著名なエンジニアの設定をそのまま詰め込んだプラグインです。エンジニア別のモデルが展開され、ボーカル・ギター・ベース・ドラム用など、各楽器ごとにプラグインが用意されています。厳密にはエフェクトの種類ではありませんが、初心者でもお手軽に上質な音を作ることができます。
インストゥルメント(楽器)系
主にインストゥルメントトラックにインサートして、MIDIで打ち込んで楽器の音を出すためのソフト音源です。楽器ごとにさまざまな音源がリリースされています。これまでのエフェクト系プラグインとは系統が異なりますが、ミックスや作曲段階で使うプラグインの1種です。
まとめ
今回はミックスで使うプラグインの種類について、初心者向けに解説しました。ここでの紹介はほんの一部であり、他にもさまざまな種類のプラグインがあります。この記事がこれからミックスを始める全ての方のお役に立てれば幸いです。