これから音楽を始める初心者の方は、ミックスがどういう作業かわからない方も多いのではないでしょうか。意味は理解できても、自分でできるのかや本当に必要なのかなど、わからないことが多いですよね。そこで今回はDTM初心者の方に向けてミックスを簡単に解説します。
ミックスとは?
ミックス(ミキシング)とは、録音した各楽器の音を補正・調整して、楽曲のクオリティを高める作業です。現在一般流通しているほぼ全ての楽曲がミックスをして商品化されています。
ミックスを理解するためには、まず曲が完成するまでの流れを理解しましょう。下記の表は曲ができてから完成までの大まかな流れです。
- step1作詞・作曲・編曲
- step2レコーディング(録音)
レコーディング前に、簡易的なレコーディングをしてフレーズを確認するプリプロが行われることもあります。
- step3ミックス←今回はココの解説です
- step4マスタリング
ミックス完了後のマスタートラックを音質・音圧調整し、楽曲の情報を入力する行程。動画投稿の場合は音源と動画を合わせるエンコードが必要です。
- step5納品
- step6動画投稿・商品化
このように、ミックスは楽曲が作品として完成するまでの一行程です。
ミックスの必要性
ミックスは、現代の商品化されている音楽において必須の行程です。レコーディング完了後の音は作品として、とても世に送り出せる品質ではありません。そのため、どんな高級スタジオで世界トップレベルのアーティストであっても、必ずミックスは必要です。
また、担当するミキシングエンジニアによって、楽曲の仕上がりは大きく異なります。どのミックスも作業の大枠は同じですが、ミュージシャンと同じように、ミキシングエンジニアもクリエイティブな仕事です。
ミックスの具体的な手順6つ
ミックスの手順はミキシングエンジニアによってさまざまなので、具体的な定義はありません。ここではスタンダードな手順を紹介します。
①トラックの整理
まずは、作業を効率化するためにトラックの整理をします。各トラックの名称はもちろん、並びも重要です。基本的にベーシックな楽器から順に作業していくので、
①ドラム各パーツ(順にキック・スネア・タム・ハイハットなどの金物・トップなどが定番)
②ベース
③ギター
④キーボードや打ち込みなどのウワモノ
⑤ボーカル
などの順番に並べます。歌ってみたのミックスの場合は、カラオケ音源とボーカル・コーラスのみであることが多いので、よりシンプルです。
②大まかな音量・パンの調整
トラックを整理したら、楽曲の全体像を掴みやすくするために、なんとなくざっくりと音量とパン(音の定位)を調節します。細かな調整は最後に行なうので、ひとまず音楽としてある程度成立する程度です。
③オーディオの編集
トラックや音量などが整理できたら、いきなり音作りに移行するのではなく、まずはオーディオ(波形)の編集から行ないます。具体的には、ノイズ除去やリズム(タイミング)補正などです。
ノイズ除去
演奏時以外の空白部分や物音などのノイズを除去します。この作業をゴミ取りと言い、必ず必要な作業です。また、背景ノイズやボーカルのリップノイズなど、演奏や歌に乗ってしまったノイズもプラグインを使って除去します。
リズム補正
楽器や歌のリズムがズレているところを補正する作業です。基本的にはドラムなどのベーシックな楽器から順に、手作業で波形をカットしてズラします。全部メトロノームにしっかり合わせるかや、あえて部分的にズレたところを味として残すかもミキシングエンジニアによってさまざまです。
打ち込みなど機械的に正確なリズムを刻む音色が入っている場合は、基本的に全パートをシビアにリズム補正します。下の画像はドラムを細かくリズム補正したもので、細かくカットされているのがわかります。
④音作り
ここでやっと本格的な音作りに入ります。各トラックにプラグインエフェクトを挿入し、音を作り込む作業です。細かく説明すると膨大な量になるので、ミックスで使用するプラグインについては、別の記事で詳しく解説しています。
エンジニアによって大きく差が出るミックスの核となる行程で、音作りが完了すると楽曲のクオリティが格段にアップします。
ミックスで使用するプラグインは下記の記事で紹介しています。参考にしていただければ幸いです。
⑤オートメーション
オートメーションとは、フェーダーやツマミの変化情報を書き込むことで、音量・パン・エフェクトのかかり方などの変化を機械で自動的にさせる機能のことです。
例えば、インパクトを出すために、サビの1発目のキックとシンバルの音を上げたり、ボーカルの聞き取りにくい箇所の音量を部分的に持ち上げたりすることもできます。
⑥最終チェックと微調整
最後に、楽曲の最初から最後まで何度も聞いて微調整します。使用するモニター環境で大きく差が生まれないように、複数のモニタースピーカー・モニターヘッドホンで確認することが多いです。
問題なければ、全てのトラックを1つのステレオトラックに集め、マスター(2mix)として書き出してマスタリングに移行します。
ミックスの手段
ミックスは、「自分でする」「人や会社に依頼する」の2種類の手段があります。どちらが自分に合っているか見てみましょう。
自分でミックスする
自分でミックスする1番のメリットは、音楽家としての幅が広がる点です。エンジニア視点を持つことで、その後の自分の楽曲制作に良い影響を与えるでしょう。そのため私個人としては、作品として公開するかどうかは別として、音楽家であればミックスに手をつけた方がいいと思っています。
一方で、自分でミックスするデメリットは、ミックスの勉強が必須であることや、機材を買い揃える必要があることです。また必ずしも、自分でミックスする=自分の理想の音にできる、というわけではありません。豊富なミックスの知識やスキルがないと、自分の理想の音にできないからです。
自分でミックスする場合、DTMに必要な機材は下記の記事で紹介しています。参考にしていただけたら幸いです。
ミックスを依頼する
ミックスの手段として最もスタンダードなのが、ミキシングエンジニアや会社に依頼することです。基本的にお金が発生することがほとんどですが、プロがミックスするため安心感があり、高いクオリティで納品されます。
スタジオや会社に依頼する場合は、高い信頼性があり、作曲やレコーディングからサポートしてくれるところも少なくありません。一方で、価格が高い傾向にあるのがデメリットです。
個人に依頼する場合は、有償と無償があります。無償はお金が発生しないのがメリットですが、クオリティや安心感を重視するなら有償がおすすめです。私たかまるへのご依頼は、ご依頼フォームより受け付けております。
まとめ
この記事ではDTM初心者に向けて、ミックスとは何かについて解説しました。ミックスは簡単に言うと曲の編集ですが、実に奥が深く難しく、そして何より楽しいものです。この記事を通して、初心者の方がミックスについて少しでもご理解いただけたら幸いです。